アパパネ(ハワイ島)

ハワイを彩る花々のほとんどは外来種で、ハワイ固有の植物は5%に届きません。しかし、ハワイ固有の動物の多くは固有の植物に依存しています。これらの在来種は外来種の繁殖によって生息地を失ったり、追われたりしています。なかでもハワイミツスイはもっとも大きな影響を受けているといって良いでしょう。
ハワイミツスイは体長が10cmから20cmほどの小さな鳥で、森に暮らします。山のなかで出会うことはできますが、声は聞こえても、姿が見えなかったり、すぐに飛び去ってしまいます。また、繁殖期以外は小さな群れしかつくらず、その上1カ所にとどまることが少ないので、なかなか間近で目撃できません。ハワイミツスイが観光客はもとより地元住民にとってもあまりポピュラーと言えないのは、このような理由からです。

ハワイミツスイはハワイ固有の鳥ですが、その祖先は北アメリカのハウスフィンチ(スズメ目アトリ科ヒワ亜科マシコ属)だと言われています。ハウス・フィンチから分岐したのは今から350万年ほど前であることがわかっています。当時、オアフ島は海面から顔を出しはじめた頃で、活発な噴火活動が続いていました。島にはまだ森は誕生しておらず、従って海鳥以外の鳥の姿は見られなかったことでしょう。地質年代がそれより新しいマウイ、モロカイ、ラナイ、カホオラヴェの各島はまだ海底火山でしたし、ハワイ島に至ってはまったく存在していなかったかもしれません。以上のことからわかるのは、ハワイミツスイの先祖であるハウス・フィンチは地質年代がもっとも古いカウアイ島やニイハウ島、あるいはさらに北西に連なる北西ハワイ諸島に端を発するということです。

イイヴィ(マウイ島)

適応放散

ハワイ諸島には哺乳類などの天敵がほとんどいなかったので、鳥たちは自分たちの行動範囲を広くする必要がありませんでした。ハワイミツスイは特定の場所に落ち着き、そこに自生するもっとも好ましい植物を餌にしました。その結果、花の蜜を吸うものはくちばしが長く彎曲し、樹のなかの昆虫を食べるものは上のくちばしが下のくちばしよりも長くなりました。また、木の実をこじ開けて食べるものは下のくちばしが極端に短くなり、固い実を食べる種類は祖先のハウスフィンチと同じく、万力のように短くて太いくちばしを持つようになりました。このように、生物が異なった環境に適応し、比較的短い期間に形態や生理的に分化し、さまざまな系統に分岐していく現象を適応放散と言います。

※ハワイミツスイと並んで有名な適応放散の例としてガラパゴス諸島のダーウィンフィンチがいます。その名の通り、進化論を唱えたダーウィンによって発見された鳥です。彼はハワイミツスイについても調査をしています。

アマキヒ(カウアイ島)

悪化する環境

ハワイミツスイは島々に繁殖し、最盛期である200年ほど前には50種近くが生息していたとされます。しかし、現在は13属約23種とされます。この数字は「生存している可能性がゼロではない」という意味で、実際には20種を切るまでに減少しています。彼らの生息環境は日々悪化しています。

ハワイミツスイがこれほどまでに減少した理由はいくつかあります。ひとつは島に人が住み着き、耕地や集落を作ったことで一部の生息地を追われたため。2つ目は鳥に感染するマラリア蚊が蔓延して膨大な数のハワイミツスイが死んだため。3つ目に外来動物が侵入したり、外来植物が在来の植物を駆逐したりして、生息環境が悪化したためです。

ハワイは大洋島と呼ばれ、大陸から遠く離れています。このような環境では外敵はきわめて少なく、植物はトゲを持つことをやめ、鳥たちはテリトリーを気にすることなく特定のエサを手に入れることができました。ハワイミツスイの進化は、ハワイという土地だからこそ起こり得たと言えます。しかし、その環境が崩れた結果、ハワイミツスイの多くは絶滅の道を進んでいます。現在は保護と繁殖のためにさまざまな努力が払われていますが、ハワイミツスイが将来は決して安泰とは言えません。

アラウアヒオ(マウイ島)

ハワイミツスイの種類

※永く確認が取れておらず、絶滅の可能性のあるものを含みます。

Telespiza cantans, Laysan Finch, レイサンハワイマシコ
Telespiza ultima, Nihoa Finch, ニホアハワイマシコ
Psittirostra psittacea, Ou, キガシラハワイマシコ
Dysmorodrepanis munroi, Lanai Hookbill, ラナイマシコ
Loxioides bailleui, Palila, キムネハワイマシコ
Rhodacanthis flaviceps, Lesser Koa‐Finch, ヒメコアハワイマシコ
Rhodacanthis palmeri, Greater Koa‐Finch, コアハワイマシコ
Chloridops kona, Kona Grosbeak, ハワイマシコ
Pseudonestor xanthophrys,     Maui Parrotbill, オウムハシハワイマシコ
Hemignathus virens, Hawaii Amakihi (Viridonia virens)
Hemignathus flavus, Oahu Amakihi
Hemignathus kauaiensis, Kauai Amakihi (Viridonia stejnegeri)
Viridonia sagittirostris, Greater Amakihi
Hemignathus obscurus, Lesser Akialoa, ユミハシハワイミツスイ
Hemignathus ellisianus, Greater Akialoa
Hemignathus lucidus, Nukupuu, マウイカワリハシハワイミツスイ
Hemignathus munroi, Akiapolaau (H. wilsoni)
Magumma parva, Anianiau, アニアニアウ
Oreomystis bairdi, Akikiki, カウアイキバシリ
Oreomystis mana, Hawaii Creeper, ハワイキバシリ
Paroreomyza maculata, Oahu Alauahio, キバシリハワイミツスイ
Paroreomyza flammea, Kakawahie, モロカイキバシリ
Paroreomyza montana, Maui Alauahio, マウイキバシリ
Loxops caeruleirostris, Akekee, アケエエ
Loxops coccineus, Akepa, コバシハワイミツスイ
Ciridops anna, Ula‐ai‐hawane, ウラアイハワネ
Vestiaria coccinea, Iiwi, ベニハワイミツスイ
Drepanis pacifica, Hawaii Mamo, キゴシクロハワイミツスイ
Drepanis funerea, Black Mamo, クロハワイミツスイ
Palmeria dolei, Akohekohe, カンムリハワイミツスイ
Himatione sanguinea, Apapane, アカハワイミツスイ
Melamprosops phaeosoma, Poouli, カオグロハワイミツスイ

ハワイの野鳥(1)ハワイミツスイhttp://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2017/04/apapane-hawaii_0210.jpghttp://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2017/04/apapane-hawaii_0210-150x150.jpg近藤純夫特集アパパネ,アマキヒ,アラウアヒオ,イイヴィ,ハワイ,ハワイミツスイ,野鳥ハワイを彩る花々のほとんどは外来種で、ハワイ固有の植物は5%に届きません。しかし、ハワイ固有の動物の多くは固有の植物に依存しています。これらの在来種は外来種の繁殖によって生息地を失ったり、追われたりしています。なかでもハワイミツスイはもっとも大きな影響を受けているといって良いでしょう。 ハワイミツスイは体長が10cmから20cmほどの小さな鳥で、森に暮らします。山のなかで出会うことはできますが、声は聞こえても、姿が見えなかったり、すぐに飛び去ってしまいます。また、繁殖期以外は小さな群れしかつくらず、その上1カ所にとどまることが少ないので、なかなか間近で目撃できません。ハワイミツスイが観光客はもとより地元住民にとってもあまりポピュラーと言えないのは、このような理由からです。 ハワイミツスイはハワイ固有の鳥ですが、その祖先は北アメリカのハウスフィンチ(スズメ目アトリ科ヒワ亜科マシコ属)だと言われています。ハウス・フィンチから分岐したのは今から350万年ほど前であることがわかっています。当時、オアフ島は海面から顔を出しはじめた頃で、活発な噴火活動が続いていました。島にはまだ森は誕生しておらず、従って海鳥以外の鳥の姿は見られなかったことでしょう。地質年代がそれより新しいマウイ、モロカイ、ラナイ、カホオラヴェの各島はまだ海底火山でしたし、ハワイ島に至ってはまったく存在していなかったかもしれません。以上のことからわかるのは、ハワイミツスイの先祖であるハウス・フィンチは地質年代がもっとも古いカウアイ島やニイハウ島、あるいはさらに北西に連なる北西ハワイ諸島に端を発するということです。 適応放散 ハワイ諸島には哺乳類などの天敵がほとんどいなかったので、鳥たちは自分たちの行動範囲を広くする必要がありませんでした。ハワイミツスイは特定の場所に落ち着き、そこに自生するもっとも好ましい植物を餌にしました。その結果、花の蜜を吸うものはくちばしが長く彎曲し、樹のなかの昆虫を食べるものは上のくちばしが下のくちばしよりも長くなりました。また、木の実をこじ開けて食べるものは下のくちばしが極端に短くなり、固い実を食べる種類は祖先のハウスフィンチと同じく、万力のように短くて太いくちばしを持つようになりました。このように、生物が異なった環境に適応し、比較的短い期間に形態や生理的に分化し、さまざまな系統に分岐していく現象を適応放散と言います。 ※ハワイミツスイと並んで有名な適応放散の例としてガラパゴス諸島のダーウィンフィンチがいます。その名の通り、進化論を唱えたダーウィンによって発見された鳥です。彼はハワイミツスイについても調査をしています。 悪化する環境 ハワイミツスイは島々に繁殖し、最盛期である200年ほど前には50種近くが生息していたとされます。しかし、現在は13属約23種とされます。この数字は「生存している可能性がゼロではない」という意味で、実際には20種を切るまでに減少しています。彼らの生息環境は日々悪化しています。 ハワイミツスイがこれほどまでに減少した理由はいくつかあります。ひとつは島に人が住み着き、耕地や集落を作ったことで一部の生息地を追われたため。2つ目は鳥に感染するマラリア蚊が蔓延して膨大な数のハワイミツスイが死んだため。3つ目に外来動物が侵入したり、外来植物が在来の植物を駆逐したりして、生息環境が悪化したためです。 ハワイは大洋島と呼ばれ、大陸から遠く離れています。このような環境では外敵はきわめて少なく、植物はトゲを持つことをやめ、鳥たちはテリトリーを気にすることなく特定のエサを手に入れることができました。ハワイミツスイの進化は、ハワイという土地だからこそ起こり得たと言えます。しかし、その環境が崩れた結果、ハワイミツスイの多くは絶滅の道を進んでいます。現在は保護と繁殖のためにさまざまな努力が払われていますが、ハワイミツスイが将来は決して安泰とは言えません。 ハワイミツスイの種類 ※永く確認が取れておらず、絶滅の可能性のあるものを含みます。 Telespiza cantans, Laysan Finch, レイサンハワイマシコ Telespiza ultima, Nihoa Finch, ニホアハワイマシコ Psittirostra psittacea, Ou, キガシラハワイマシコ Dysmorodrepanis munroi, Lanai Hookbill, ラナイマシコ Loxioides bailleui, Palila, キムネハワイマシコ Rhodacanthis flaviceps, Lesser Koa‐Finch, ヒメコアハワイマシコ Rhodacanthis palmeri, Greater Koa‐Finch, コアハワイマシコ Chloridops kona, Kona Grosbeak, ハワイマシコ Pseudonestor xanthophrys,     Maui Parrotbill, オウムハシハワイマシコ Hemignathus virens, Hawaii Amakihi (Viridonia virens) Hemignathus flavus, Oahu Amakihi Hemignathus kauaiensis, Kauai Amakihi (Viridonia stejnegeri) Viridonia sagittirostris,...ハワイの自然・文化・歴史、ライフスタイルを語る