プウ・オーオーの噴火活動
プウ・オーオーの噴火活動

火山活動の特徴   

火山活動と聞くと、日本人のわれわれは災害を思い起こします。国内では多くのいたましい災害がありました。しかし、ハワイ島では少し事情が異なります。かつて、ハワイの人々はレジャーとして溶岩見物に出かけることもありました。日本とハワイの火山活動にどのような違いがあるのでしょうか?

地球の地下およそ100kmから200kmの範囲を上部マントルと呼びます。地上に噴き出すマグマはこのなかで発生します。その中身は主に橄欖(かんらん)岩で、岩石を構成するさまざまな物質のうち、融けやすいもの(珪酸、酸化アルミニウムなど)は液体となり、融けにくいもの(酸化マグネシウムなど)は結晶物質、それ以外は火山ガスとなります。このうち、液状となったものが徐々に集まってマグマとなります。

生成されたマグマは周囲より比重が小さいので上昇をはじめます。しかし、地表を覆う地殻の密度はマントルより小さいので、マグマが地殻周辺に到達して周囲の密度と等しくなると、そこで上昇を止めます。やがてその場所にマグマの溜まりが出現します。これをマグマ溜り(ホットスポット)と呼びます。その深さはおよそ地下2kmから4kmです。マグマ溜まりのマグマは、火山活動を通して流れ出し、溶岩となります。ハワイ諸島はすべて地底のマグマ溜まりから噴出した溶岩によって造られました。

キラウエア・イキの噴火  photo by USGS
キラウエア・イキの噴火  photo by USGS

火山ガス

火山から噴出するものには、溶岩のほかに火山ガスがあります。ハワイ島ではキラウエア火山と、それに連なる噴火口やリフトゾーン、マウナ・ロア山頂のモクアーヴェオヴェオ・クレーター、マウナ・ウル、プウ・オーオー、そしてフアラライ山頂周辺などから火山ガスが噴出します。また、岩の割れ目(クラック)やハレマウマウの内部にある溶岩湖などからも発生します。

火山ガスは白色のものもあれば、黄色や黒に近いものもあります。白いガスは水蒸気ガスで、色のついたものは火山灰などが混ざったものです。火山ガスのほとんど(90%以上)は水蒸気ですが、それ以外にも二酸化炭素、塩化水素、フッ化水素、窒素、水素、一酸化炭素、メタン、アンモニアなど、多くの成分が火山ガスに含まれます。水蒸気を除き、これらはすべて人体に有毒なので注意が必要です。

溶岩見学の場所としてよく知られるハワイ島キラウエア火山の南麓海岸では、溶岩の見学に気をとらわれていると、ときに大変なことになります。噴火をつづけるプウ・オーオーでは溶岩の噴き出し以上に、膨大な噴煙を上げています。噴煙はたいてい南に流れますが、ときおり南西に向かって流れますその方向に居合わせると、火山ガスに巻き込まれ、刺激物質のせいで咳き込んだり、涙が止まらなくなったり、ひどいときは呼吸困難に陥ります。視界の色が変化したときは迅速に遠ざかる必要があります。

ハレマウマウに出現した溶岩湖と噴煙
ハレマウマウに出現した溶岩湖と噴煙

溶岩の性質

ハワイでは火山の噴火活動で溶岩が流れ出します。マグマが地表に放出され、それが冷え固まるまでの溶けた状態(溶融状態)を溶岩といいますが、冷え固まったものも同じく溶岩と呼びます。この溶岩は噴出直後には摂氏1000度から1200度になります。ただし、温度や性質は、マグマを構成する岩石と鉱物の割合によって大きく異なります。

火山岩はふつうその内部に含まれる珪酸(二酸化珪素、SiO2)によって呼び名が変わります。溶岩流中の二酸化珪素の割合が40~52%のものは玄武岩、52~55%のものを玄武岩質安山岩、55~63%のものを安山岩、63~70%ものをデイサイト、70~76%のものを流紋岩と呼びます。玄武岩質の溶岩流では摂氏1050度から1200度、安山岩質の溶岩流で摂氏1000度から1100度というように、珪酸の含有量が少ないほど高温で、水っぽい(流動性に富んだ)溶岩となります。

ハワイ島の火山から噴出する溶岩はほぼ玄武岩質溶岩です。水っぽい溶岩は爆発を伴うことが少なく、水の流れる川のように流れます。そこで昔のハワイの人々は、溶岩流を恐れることなく、流れを眺めに出かけることができたのです。

とは言え、つねに噴火が安全なわけではありません。カメハメハ1世がハワイ島で諸島制覇の戦いをしていたとき、劣勢の状況でした。そのとき敵の部隊に噴火で噴き出した火山礫が降り注ぎ、敵に壊滅的な打撃を与えたことでことなきを得たことがあります。数十年前にもキラウエア・イキで巨大な噴火が起き、多量の噴石を噴き上げました。キラウエア・イキ・クレーターの脇にあるプウ・プアイという噴石丘は、このときに誕生したものです。火山の観察にはそれなりのリスクが伴いますが、地球の内部と連なる壮大な自然現象は、ハワイ島の大きな魅力のひとつであることは間違いありません。

 

イースト・リフト・ゾーンの噴煙
イースト・リフト・ゾーンの噴煙
火山と溶岩(1)http://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2017/12/eyecatch_special231.jpghttp://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2017/12/eyecatch_special231-150x150.jpg近藤純夫特集キラウエア,ハワイ島,マグマ,溶岩,火山,火山ガス,玄武岩火山活動の特徴    火山活動と聞くと、日本人のわれわれは災害を思い起こします。国内では多くのいたましい災害がありました。しかし、ハワイ島では少し事情が異なります。かつて、ハワイの人々はレジャーとして溶岩見物に出かけることもありました。日本とハワイの火山活動にどのような違いがあるのでしょうか? 地球の地下およそ100kmから200kmの範囲を上部マントルと呼びます。地上に噴き出すマグマはこのなかで発生します。その中身は主に橄欖(かんらん)岩で、岩石を構成するさまざまな物質のうち、融けやすいもの(珪酸、酸化アルミニウムなど)は液体となり、融けにくいもの(酸化マグネシウムなど)は結晶物質、それ以外は火山ガスとなります。このうち、液状となったものが徐々に集まってマグマとなります。 生成されたマグマは周囲より比重が小さいので上昇をはじめます。しかし、地表を覆う地殻の密度はマントルより小さいので、マグマが地殻周辺に到達して周囲の密度と等しくなると、そこで上昇を止めます。やがてその場所にマグマの溜まりが出現します。これをマグマ溜り(ホットスポット)と呼びます。その深さはおよそ地下2kmから4kmです。マグマ溜まりのマグマは、火山活動を通して流れ出し、溶岩となります。ハワイ諸島はすべて地底のマグマ溜まりから噴出した溶岩によって造られました。 火山ガス 火山から噴出するものには、溶岩のほかに火山ガスがあります。ハワイ島ではキラウエア火山と、それに連なる噴火口やリフトゾーン、マウナ・ロア山頂のモクアーヴェオヴェオ・クレーター、マウナ・ウル、プウ・オーオー、そしてフアラライ山頂周辺などから火山ガスが噴出します。また、岩の割れ目(クラック)やハレマウマウの内部にある溶岩湖などからも発生します。 火山ガスは白色のものもあれば、黄色や黒に近いものもあります。白いガスは水蒸気ガスで、色のついたものは火山灰などが混ざったものです。火山ガスのほとんど(90%以上)は水蒸気ですが、それ以外にも二酸化炭素、塩化水素、フッ化水素、窒素、水素、一酸化炭素、メタン、アンモニアなど、多くの成分が火山ガスに含まれます。水蒸気を除き、これらはすべて人体に有毒なので注意が必要です。 溶岩見学の場所としてよく知られるハワイ島キラウエア火山の南麓海岸では、溶岩の見学に気をとらわれていると、ときに大変なことになります。噴火をつづけるプウ・オーオーでは溶岩の噴き出し以上に、膨大な噴煙を上げています。噴煙はたいてい南に流れますが、ときおり南西に向かって流れますその方向に居合わせると、火山ガスに巻き込まれ、刺激物質のせいで咳き込んだり、涙が止まらなくなったり、ひどいときは呼吸困難に陥ります。視界の色が変化したときは迅速に遠ざかる必要があります。 溶岩の性質 ハワイでは火山の噴火活動で溶岩が流れ出します。マグマが地表に放出され、それが冷え固まるまでの溶けた状態(溶融状態)を溶岩といいますが、冷え固まったものも同じく溶岩と呼びます。この溶岩は噴出直後には摂氏1000度から1200度になります。ただし、温度や性質は、マグマを構成する岩石と鉱物の割合によって大きく異なります。 火山岩はふつうその内部に含まれる珪酸(二酸化珪素、SiO2)によって呼び名が変わります。溶岩流中の二酸化珪素の割合が40~52%のものは玄武岩、52~55%のものを玄武岩質安山岩、55~63%のものを安山岩、63~70%ものをデイサイト、70~76%のものを流紋岩と呼びます。玄武岩質の溶岩流では摂氏1050度から1200度、安山岩質の溶岩流で摂氏1000度から1100度というように、珪酸の含有量が少ないほど高温で、水っぽい(流動性に富んだ)溶岩となります。 ハワイ島の火山から噴出する溶岩はほぼ玄武岩質溶岩です。水っぽい溶岩は爆発を伴うことが少なく、水の流れる川のように流れます。そこで昔のハワイの人々は、溶岩流を恐れることなく、流れを眺めに出かけることができたのです。 とは言え、つねに噴火が安全なわけではありません。カメハメハ1世がハワイ島で諸島制覇の戦いをしていたとき、劣勢の状況でした。そのとき敵の部隊に噴火で噴き出した火山礫が降り注ぎ、敵に壊滅的な打撃を与えたことでことなきを得たことがあります。数十年前にもキラウエア・イキで巨大な噴火が起き、多量の噴石を噴き上げました。キラウエア・イキ・クレーターの脇にあるプウ・プアイという噴石丘は、このときに誕生したものです。火山の観察にはそれなりのリスクが伴いますが、地球の内部と連なる壮大な自然現象は、ハワイ島の大きな魅力のひとつであることは間違いありません。  ハワイの自然・文化・歴史、ライフスタイルを語る