ハワイ火山国立公園では、ビジターセンターをはじめとする諸施設はほとんどがキラウエア・カルデラ周辺にあります。しかし、国立公園はキラウエア周辺だけではありません。公園の敷地は、その先のマウナ・ロア山頂まで広大な面積があります。

マウナ・ロア山頂に広がるモクアーヴェオヴェオ・カルデラ
マウナ・ロア山頂に広がるモクアーヴェオヴェオ・カルデラ

ハワイ島は成長を続ける島です。キラウエア火山だけでなく、標高4169メートルに達するマウナ・ロアの山頂にはキラウエア・カルデラに匹敵する規模の巨大カルデラ(モクアーヴェオヴェオ)があり、いまも噴煙を上げています。地球内部から伸びたマグマの先端はこの山の下までその触手を伸ばしているのです。このほか、カイルア・コナに近いフアラライ山でも山頂から噴煙が上がっていますし、島の南東沖でも海中で噴火活動を繰り広げています。

カラパナ地区近くの海岸に噴出する溶岩と噴煙
カラパナ地区近くの海岸に噴出する溶岩と噴煙

北のマウナ・ロア側と同じように、キラウエア・カルデラから南側の海岸に至る地域も重要です。ハワイ島は火山の噴火と、それに伴う陸地の形成を観察する上でとても分かりやすい見本を用意してくれているからです。キラウエア・カルデラの先にはチェーン・オブ・クレーターズと呼ばれるクレーターが、名前の通りチェーンのように連なっています。名前の付いているものは2ダース以上あります。

クレーター群を抜けて海岸まで降りると、流れ落ちてきた溶岩が海岸を押し広げているのがわかりますし、来た道を振り返ると、一面の溶岩のなかに、溶岩流が造り出した巨大な滝や、大小無数の洞窟などに気づくことでしょう。観光客はあまり足を向けませんが、公園の南西部に位置するヒリナ・パリ(ヒリナの崖)では、はるかに雄大な溶岩滝(崖)を観察できます。

キラウエア・カルデラ上空からプウ・オー・オーに連なるクレーター群を見る
キラウエア・カルデラ上空からプウ・オー・オーに連なるクレーター群を見る

各クレーターのうち、ナーパウ・クレーターは1963年と65年に、マカオプヒ・クレーターは1969年の噴火で誕生しました。いずれも遠い過去の話ではないのです。今日ではプウ・オー・オ-が多くの溶岩を流していますが、それ以前は少し南に下ったところにあるマウナ・ウルは1960年代から73年に至るまで膨大な量の溶岩を流していました。

これらの噴火口を含むキラウエア火山の活動は巨大です。1980年代には南部のカラパナの町が溶岩に呑みこまれました。プウ・オー・オーの活動はピークを過ぎ、活動の主体は南東に移動しつつありますが、南東端のパホアの町では、流れ出した溶岩が町の一部を埋め尽くす騒ぎが昨年に起きたばかりです。この島ではいまも噴火活動と縁を切れません。

ヒリナ・パリの景観
ヒリナ・パリの景観

東南端のカポホ・クレーターからキラウエア・カルデラに至るクレーター群を繋ぐと、そのラインは北西へと伸びていることがわかります。その先にはマウイ島やラナイ島、モロカイ島などが、さらに先にはオアフ島が、そしてカウアイ島、ニイハウ島と連なります。ニイハウ島の先にも北西ハワイ諸島と呼ばれる小さな島々が、2400kmにもわたって連なります。

これらの島の誕生はいずれも地下にたまったマグマ溜まり(ホットスポット)から供給されたものです。地球の表面はつねに動いていて、ハワイ諸島の乗る太平洋プレートはいまも年に6cmから9cmほどの速さで北西方面に向かって動きつづけています。その先には日本列島があり、押し寄せたエネルギーはやがて地震という形で放出されます。このようにハワイ諸島の火山活動を知ることは、わたしたち日本人にとっても重要な意味を持つのです。毎年、日本の深海艇がハワイ沖に潜って観察をつづけているのも、そのような理由からです。

ホーレイ・シーアーチ
ホーレイ・シーアーチ

ハワイ火山国立公園の敷地内にはこの他にも見どころはたくさんあります。海岸近くのプウロア地区には、伝統ハワイの文化が残した岩刻画(ペトログリフ)がありますし、チェーン・オブ・クレーターズ・ロードが海岸に達した地点には洞門(ホーレイ・シーアーチ)が、巨大な溶岩滝の手前には埋もれかけたかつての道路跡も見られます。また、いまは活動規模が小さいですが、海に到達した噴煙が見られれば、そのパワーに圧倒されることでしょう。たとえ噴煙が上がっていなくても、途中に見られるさまざまな溶岩の造形物は想像力をかき立てられるに違いありません。

このように各所で活発に火山活動を続けることが、広いポリネシアの島々のなかでハワイ諸島独特の神を生み出すきっかけともなりました。それは火の女神ペレです。人の力ではなすすべのない巨大なエネルギーを神になぞらえたのです。ペレとは、本来「火山」とか「溶岩」を指すタヒチ語でしたが、人々は計り知れぬパワーを感じ、ペレを火の女神と名づけて怖れたのです。ハワイ島は火の女神ペレの住む島であることを教えてくれるのも、この国立公園と言えるでしょう。

トップページはチェーン・オブ・クレーターズ・ロードの途中で出現した虹の写真です。次回は火山活動で生じるさまざまな溶岩を紹介します。

特集:ハワイ火山国立公園(2)近藤純夫特集キラウエア火山,チェーンオブクレーターズ,ハワイ火山国立公園ハワイ火山国立公園では、ビジターセンターをはじめとする諸施設はほとんどがキラウエア・カルデラ周辺にあります。しかし、国立公園はキラウエア周辺だけではありません。公園の敷地は、その先のマウナ・ロア山頂まで広大な面積があります。 ハワイ島は成長を続ける島です。キラウエア火山だけでなく、標高4169メートルに達するマウナ・ロアの山頂にはキラウエア・カルデラに匹敵する規模の巨大カルデラ(モクアーヴェオヴェオ)があり、いまも噴煙を上げています。地球内部から伸びたマグマの先端はこの山の下までその触手を伸ばしているのです。このほか、カイルア・コナに近いフアラライ山でも山頂から噴煙が上がっていますし、島の南東沖でも海中で噴火活動を繰り広げています。 北のマウナ・ロア側と同じように、キラウエア・カルデラから南側の海岸に至る地域も重要です。ハワイ島は火山の噴火と、それに伴う陸地の形成を観察する上でとても分かりやすい見本を用意してくれているからです。キラウエア・カルデラの先にはチェーン・オブ・クレーターズと呼ばれるクレーターが、名前の通りチェーンのように連なっています。名前の付いているものは2ダース以上あります。 クレーター群を抜けて海岸まで降りると、流れ落ちてきた溶岩が海岸を押し広げているのがわかりますし、来た道を振り返ると、一面の溶岩のなかに、溶岩流が造り出した巨大な滝や、大小無数の洞窟などに気づくことでしょう。観光客はあまり足を向けませんが、公園の南西部に位置するヒリナ・パリ(ヒリナの崖)では、はるかに雄大な溶岩滝(崖)を観察できます。 各クレーターのうち、ナーパウ・クレーターは1963年と65年に、マカオプヒ・クレーターは1969年の噴火で誕生しました。いずれも遠い過去の話ではないのです。今日ではプウ・オー・オ-が多くの溶岩を流していますが、それ以前は少し南に下ったところにあるマウナ・ウルは1960年代から73年に至るまで膨大な量の溶岩を流していました。 これらの噴火口を含むキラウエア火山の活動は巨大です。1980年代には南部のカラパナの町が溶岩に呑みこまれました。プウ・オー・オーの活動はピークを過ぎ、活動の主体は南東に移動しつつありますが、南東端のパホアの町では、流れ出した溶岩が町の一部を埋め尽くす騒ぎが昨年に起きたばかりです。この島ではいまも噴火活動と縁を切れません。 東南端のカポホ・クレーターからキラウエア・カルデラに至るクレーター群を繋ぐと、そのラインは北西へと伸びていることがわかります。その先にはマウイ島やラナイ島、モロカイ島などが、さらに先にはオアフ島が、そしてカウアイ島、ニイハウ島と連なります。ニイハウ島の先にも北西ハワイ諸島と呼ばれる小さな島々が、2400kmにもわたって連なります。 これらの島の誕生はいずれも地下にたまったマグマ溜まり(ホットスポット)から供給されたものです。地球の表面はつねに動いていて、ハワイ諸島の乗る太平洋プレートはいまも年に6cmから9cmほどの速さで北西方面に向かって動きつづけています。その先には日本列島があり、押し寄せたエネルギーはやがて地震という形で放出されます。このようにハワイ諸島の火山活動を知ることは、わたしたち日本人にとっても重要な意味を持つのです。毎年、日本の深海艇がハワイ沖に潜って観察をつづけているのも、そのような理由からです。 ハワイ火山国立公園の敷地内にはこの他にも見どころはたくさんあります。海岸近くのプウロア地区には、伝統ハワイの文化が残した岩刻画(ペトログリフ)がありますし、チェーン・オブ・クレーターズ・ロードが海岸に達した地点には洞門(ホーレイ・シーアーチ)が、巨大な溶岩滝の手前には埋もれかけたかつての道路跡も見られます。また、いまは活動規模が小さいですが、海に到達した噴煙が見られれば、そのパワーに圧倒されることでしょう。たとえ噴煙が上がっていなくても、途中に見られるさまざまな溶岩の造形物は想像力をかき立てられるに違いありません。 このように各所で活発に火山活動を続けることが、広いポリネシアの島々のなかでハワイ諸島独特の神を生み出すきっかけともなりました。それは火の女神ペレです。人の力ではなすすべのない巨大なエネルギーを神になぞらえたのです。ペレとは、本来「火山」とか「溶岩」を指すタヒチ語でしたが、人々は計り知れぬパワーを感じ、ペレを火の女神と名づけて怖れたのです。ハワイ島は火の女神ペレの住む島であることを教えてくれるのも、この国立公園と言えるでしょう。 トップページはチェーン・オブ・クレーターズ・ロードの途中で出現した虹の写真です。次回は火山活動で生じるさまざまな溶岩を紹介します。ハワイの自然・文化・歴史、ライフスタイルを語る