レイをかけてもらうと花の香りとともにアロハの心までいただいた気持ちになります。今日ではハワイの文化に切り離せないシンボルのひとつと言えるでしょう。

レイには首にかけるもののほか、頭や手脚など、さまざまな種類があります。また、儀式的なものについては、使う素材や作り方、始める時間についてまで細かなカプ(ルール)が定められていました。花のレイが主役になったのは王国が誕生して以降のこと。その昔は、高貴な人物の髪の毛やクジラの骨など、そのなかに強いマナ(霊的な力)が蓄えられていて、悪いものを遠ざける目的(厄除け)で用いました。

20世紀に入ると各島にシンボルとなるレイが誕生しました。カウアイ島は紫のモキハナ、オアフ島はイエローオレンジのイリマ、モロカイ島はシルバー・グリーンのククイ、ラナイ島はゴールドのカウナオア、カホオラヴェ島はシルバー・グレーのヒナヒナ、マウイ島はディープピンクのロケラニ、ハワイ島は赤いオヒア・レフアです。ニイハウ島は植物ではなく、ププと呼ばれる白い貝です。各島を象徴するレイを編むときは、これらの花や貝を用います。

モキハナ(カウアイ島)

ワイメアからコケエにかけて森の奥深くに分布します。毎年コケエで開かれるエマラニ・フェスティバルではモキハナのレイを身につけてフラを踊ります。香りの強い植物というのは、刺激(毒性)が強いことが多く、モキハナで作られたレイをかけると、あらかじめ実を拭いたり、首にクリームなどを塗っても、踊り終える頃には赤くただれるほどです。それでもカウアイ島の花(実)として大切にされ、今日に至ります。

モキハナはミカン科の植物で、ハワイ(カウアイ島)固有種です。樹高は2〜8m、花のサイズはとても小さく2mmほどしかありません。花は半透明の淡緑色で枝の基部につきます。ただし花弁は苞に包み込まれるように目立ちません。葉には強いアニスの香りがあります。最初は明るい緑色をしていますが、しだいに紫色に変わります。果実は淡い緑色でレイの素材となります。

モキハナの実とマイレの葉のレイ
モキハナの実とマイレの葉のレイ

イリマ(オアフ島)

赤みがかった黄色(山吹色)の花はカメハメハ王朝ではとくに珍重されました。半神マウイが怪物を退治して母である女神ヒナを助けたとき、ヒナはその喜びを表現するためにイリマでレイをつくり、自らを飾ってマウイに感謝の意を表しました。またフラの女神として知られるラカがイリマに姿を変えたという話が残されています。

ハワイ諸島を含む太平洋の島々の原産で、ハイビスカスと同じアオイ科の植物です。樹高1~3mの低木となるものと、ツル性で地を這うもの(イリマ・パパ)があります。花のサイズは2.5~3.5cmです。諸島各地に分布しますが、オアフ島のカエナ岬に大群落があります。小さな葉の間から顔を出す黄色の花は、時間とともに黄からオレンジ、淡赤色へと変化します。ハワイの伝統文化において黄色や赤色は貴い色とされ、王族のシンボル・カラーとされました。レイの素材としても知られます。花が小さく薄いので幾重にも回してかけられますが、そのために数百の花を必要とします。花はすぐに色を変えるだけでなく、すぐに萎れるので、早朝に摘んで暗箱に保管し、使用する直前に取り出すなど、他の花のレイに較べて多くの手間がかかります。花の蕾は下剤に、根の皮は疲労回復や喘息の予防に用いられました。

イリマの花
イリマの花

ククイ(モロカイ島)

ハワイにおける有用植物の代表とも言えるククイはハワイ諸島に移住したポリネシア人が持ちこみました。未開の地で暮らときにこの木が欠かすことのできない重要な役割を担ったためです。英名でキャンドルナッツと呼ぶように、ククイの実は燃料として用いられました。その他にも、調味料や薬、染料、防寒剤など、多くの目的に利用されました。さらに枝や葉、花、幹、そして根に至るまで、あらゆる部分が人々の暮らしに深く関わりました。

ククイは信仰の世界でも重要な役割を果たしました。炎から生じる煤は神々への祈りを込めて描く刺青の染料となり、仁は魔除けとして用いられました。油の放つ腐臭が災難を遠ざけると信じられたためです。ククイには濁りを取り除くという意味もあります。植物の樹液は水に落とすと溶けるか拡散するのですが、ククイ・オイルは水に垂らした油のように、決して混ざり合うことはありません。漁師はククイ・オイルを体に塗り、体温の低下を防ぎました。

ククイは外来の植物です。生長すると20mを超えます。タピオカの原料であるキャッサバと同じトウダイグサ科の植物です。モロカイ島の木であるとともにハワイ州の木でもあります。レイに用いられるのは花ではなく実です。外殻のなかにある内殻は白と黒、それにまだら模様がありますが、これを繋いでレイにします。

ククイのレイ
ククイのレイ

カウナオア(ラナイ島)

カウナオアはハワイ固有のツル性植物で、ヒルガオ科の植物です。遠目にはラーメンの麺のように見えるかもしれません。針金のような黄色の茎を伸ばして他の植物に絡みつき、そこに寄生して生長します。葉はほとんど退化しており光合成を行ないません。当初はある根も、他の植物に寄生すると捨ててしまいます。白い小さな花と黄色の茎はレイとして用いられます。ハワイでは、風邪をひいて痰が出るときや、体力を消耗した産婦に煎じて飲ませました。痰の治療には現在も一部で用いられます。

カウナオアにはポーフエフエ(ヒルガオの仲間)との愛憎物語が伝承として残されています。両者はいつも一緒であるという思いを込め、海岸に分布するカウナオアはポーフエフエに寄生しているのを多く見かけます。このツルを束ねてから三つ編みにしたものをレイとして用います。

カウナオアとツルと花
カウナオアとツルと花

ロケラニ(マウイ島)

ロケラニとは天国のバラという意味で、バラ科の植物です。この花はダマスク・ローズとして世界に知られます。というのも、数あるバラのなかでもっとも香りが良く、丈夫とされるからです。バラには数千の園芸品種がありますが、それらの原種のひとつとしても知られます。十六世紀頃に小アジアからヨーロッパに導入されましたが、野生種は発見されていません。ハワイでは、特に濃いピンク色の八重咲きを指してロケラニと呼びます。

マウイ島の家々に好んで植えられたことが島の花となった理由です。樹高は1・2〜2・4mで、花のサイズは8〜10cmほど。花を編んでレイにします。

ロケラニのレイ
ロケラニのレイ

ヒナヒナ(カホオラヴェ島)

ヒナヒナはワスレナグサなどと同じムラサキ科の植物で、ハワイ諸島を含む太平洋の島々の原産です。草丈は10cmほど。立ち上がって咲くこともありますが、ある程度の高さになると匍匐します。花のサイズは1.5〜2.5㎝。白い小花がまとまって咲きます。花には甘い芳香があること、葉には毛が密生している点が特徴です。花と葉は呼吸器の治療や鎮痛剤として用いられました。海岸の砂地に生育します。

花は葉とともに摘んでレイとしますが、希少種でもあるのでサルオガセモドキを代用とすることもあります。

ヒナヒナの花
ヒナヒナの花

レフア(ハワイ島)

レフア(オヒアレフア)の花はグァバやユーカリと同じフトモモ科のハワイ固有植物です。近縁には小笠原諸島のムニンフトモモがあります。赤い球状の花を炎に見立て、火の女神ペレの化身と信じられました。ハワイミツスイの多くはこの花の蜜を餌とします。花色は赤が基本ですが、黄色やクリーム色、オレンジ色などがあります。育つ環境によって大きく外観を変えることが知られており、樹高は30cmほどから20mほどまで多様です。ただし花のサイズはほぼ同じで、4~6cmほどです。ハワイ諸島各地に分布しますが、カウアイ島とハワイ島に大きな森があります。

オヒアの樹液とハウの蕾を調合したものは、出産の痛みを緩和する薬として用いられました。花や葉はレイに用いられるほか、フラの神を祀る祭壇にも置かれます。

レフアのレイ
レフアのレイ
島々の植物とレイhttps://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2020/03/AY_6835.jpghttps://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2020/03/AY_6835-150x150.jpg近藤純夫特集イリマ,オヒア,オヒアレフア,カウナオア,ククイ,ハワイ,ヒナヒナ,マイレ,モキハナ,レフア,ロケラニレイをかけてもらうと花の香りとともにアロハの心までいただいた気持ちになります。今日ではハワイの文化に切り離せないシンボルのひとつと言えるでしょう。 レイには首にかけるもののほか、頭や手脚など、さまざまな種類があります。また、儀式的なものについては、使う素材や作り方、始める時間についてまで細かなカプ(ルール)が定められていました。花のレイが主役になったのは王国が誕生して以降のこと。その昔は、高貴な人物の髪の毛やクジラの骨など、そのなかに強いマナ(霊的な力)が蓄えられていて、悪いものを遠ざける目的(厄除け)で用いました。 20世紀に入ると各島にシンボルとなるレイが誕生しました。カウアイ島は紫のモキハナ、オアフ島はイエローオレンジのイリマ、モロカイ島はシルバー・グリーンのククイ、ラナイ島はゴールドのカウナオア、カホオラヴェ島はシルバー・グレーのヒナヒナ、マウイ島はディープピンクのロケラニ、ハワイ島は赤いオヒア・レフアです。ニイハウ島は植物ではなく、ププと呼ばれる白い貝です。各島を象徴するレイを編むときは、これらの花や貝を用います。 モキハナ(カウアイ島) ワイメアからコケエにかけて森の奥深くに分布します。毎年コケエで開かれるエマラニ・フェスティバルではモキハナのレイを身につけてフラを踊ります。香りの強い植物というのは、刺激(毒性)が強いことが多く、モキハナで作られたレイをかけると、あらかじめ実を拭いたり、首にクリームなどを塗っても、踊り終える頃には赤くただれるほどです。それでもカウアイ島の花(実)として大切にされ、今日に至ります。 モキハナはミカン科の植物で、ハワイ(カウアイ島)固有種です。樹高は2〜8m、花のサイズはとても小さく2mmほどしかありません。花は半透明の淡緑色で枝の基部につきます。ただし花弁は苞に包み込まれるように目立ちません。葉には強いアニスの香りがあります。最初は明るい緑色をしていますが、しだいに紫色に変わります。果実は淡い緑色でレイの素材となります。 イリマ(オアフ島) 赤みがかった黄色(山吹色)の花はカメハメハ王朝ではとくに珍重されました。半神マウイが怪物を退治して母である女神ヒナを助けたとき、ヒナはその喜びを表現するためにイリマでレイをつくり、自らを飾ってマウイに感謝の意を表しました。またフラの女神として知られるラカがイリマに姿を変えたという話が残されています。 ハワイ諸島を含む太平洋の島々の原産で、ハイビスカスと同じアオイ科の植物です。樹高1~3mの低木となるものと、ツル性で地を這うもの(イリマ・パパ)があります。花のサイズは2.5~3.5cmです。諸島各地に分布しますが、オアフ島のカエナ岬に大群落があります。小さな葉の間から顔を出す黄色の花は、時間とともに黄からオレンジ、淡赤色へと変化します。ハワイの伝統文化において黄色や赤色は貴い色とされ、王族のシンボル・カラーとされました。レイの素材としても知られます。花が小さく薄いので幾重にも回してかけられますが、そのために数百の花を必要とします。花はすぐに色を変えるだけでなく、すぐに萎れるので、早朝に摘んで暗箱に保管し、使用する直前に取り出すなど、他の花のレイに較べて多くの手間がかかります。花の蕾は下剤に、根の皮は疲労回復や喘息の予防に用いられました。 ククイ(モロカイ島) ハワイにおける有用植物の代表とも言えるククイはハワイ諸島に移住したポリネシア人が持ちこみました。未開の地で暮らときにこの木が欠かすことのできない重要な役割を担ったためです。英名でキャンドルナッツと呼ぶように、ククイの実は燃料として用いられました。その他にも、調味料や薬、染料、防寒剤など、多くの目的に利用されました。さらに枝や葉、花、幹、そして根に至るまで、あらゆる部分が人々の暮らしに深く関わりました。 ククイは信仰の世界でも重要な役割を果たしました。炎から生じる煤は神々への祈りを込めて描く刺青の染料となり、仁は魔除けとして用いられました。油の放つ腐臭が災難を遠ざけると信じられたためです。ククイには濁りを取り除くという意味もあります。植物の樹液は水に落とすと溶けるか拡散するのですが、ククイ・オイルは水に垂らした油のように、決して混ざり合うことはありません。漁師はククイ・オイルを体に塗り、体温の低下を防ぎました。 ククイは外来の植物です。生長すると20mを超えます。タピオカの原料であるキャッサバと同じトウダイグサ科の植物です。モロカイ島の木であるとともにハワイ州の木でもあります。レイに用いられるのは花ではなく実です。外殻のなかにある内殻は白と黒、それにまだら模様がありますが、これを繋いでレイにします。 カウナオア(ラナイ島) カウナオアはハワイ固有のツル性植物で、ヒルガオ科の植物です。遠目にはラーメンの麺のように見えるかもしれません。針金のような黄色の茎を伸ばして他の植物に絡みつき、そこに寄生して生長します。葉はほとんど退化しており光合成を行ないません。当初はある根も、他の植物に寄生すると捨ててしまいます。白い小さな花と黄色の茎はレイとして用いられます。ハワイでは、風邪をひいて痰が出るときや、体力を消耗した産婦に煎じて飲ませました。痰の治療には現在も一部で用いられます。 カウナオアにはポーフエフエ(ヒルガオの仲間)との愛憎物語が伝承として残されています。両者はいつも一緒であるという思いを込め、海岸に分布するカウナオアはポーフエフエに寄生しているのを多く見かけます。このツルを束ねてから三つ編みにしたものをレイとして用います。 ロケラニ(マウイ島) ロケラニとは天国のバラという意味で、バラ科の植物です。この花はダマスク・ローズとして世界に知られます。というのも、数あるバラのなかでもっとも香りが良く、丈夫とされるからです。バラには数千の園芸品種がありますが、それらの原種のひとつとしても知られます。十六世紀頃に小アジアからヨーロッパに導入されましたが、野生種は発見されていません。ハワイでは、特に濃いピンク色の八重咲きを指してロケラニと呼びます。 マウイ島の家々に好んで植えられたことが島の花となった理由です。樹高は1・2〜2・4mで、花のサイズは8〜10cmほど。花を編んでレイにします。 ヒナヒナ(カホオラヴェ島) ヒナヒナはワスレナグサなどと同じムラサキ科の植物で、ハワイ諸島を含む太平洋の島々の原産です。草丈は10cmほど。立ち上がって咲くこともありますが、ある程度の高さになると匍匐します。花のサイズは1.5〜2.5㎝。白い小花がまとまって咲きます。花には甘い芳香があること、葉には毛が密生している点が特徴です。花と葉は呼吸器の治療や鎮痛剤として用いられました。海岸の砂地に生育します。 花は葉とともに摘んでレイとしますが、希少種でもあるのでサルオガセモドキを代用とすることもあります。 レフア(ハワイ島) レフア(オヒアレフア)の花はグァバやユーカリと同じフトモモ科のハワイ固有植物です。近縁には小笠原諸島のムニンフトモモがあります。赤い球状の花を炎に見立て、火の女神ペレの化身と信じられました。ハワイミツスイの多くはこの花の蜜を餌とします。花色は赤が基本ですが、黄色やクリーム色、オレンジ色などがあります。育つ環境によって大きく外観を変えることが知られており、樹高は30cmほどから20mほどまで多様です。ただし花のサイズはほぼ同じで、4~6cmほどです。ハワイ諸島各地に分布しますが、カウアイ島とハワイ島に大きな森があります。 オヒアの樹液とハウの蕾を調合したものは、出産の痛みを緩和する薬として用いられました。花や葉はレイに用いられるほか、フラの神を祀る祭壇にも置かれます。ハワイの自然・文化・歴史、ライフスタイルを語る