ライアン演習林はオアフ島のマノア渓谷に位置します。ワイキキを北に上るとマノア地区となり、その先にマノア滝へ続くマノア滝トレイルがあります。トレイルの入口から左に折れるとライアン博士を記念して造られたライアン演習林が広がります。

演習林入口の看板
演習林入口の看板

ライアン博士はミネソタ州出身のアメリカ人です。ミネソタ大学を卒業後、1902 年に博士号を取得。ハワイ砂糖産業協会(HSPA) の招きで、1907 年にハワイを訪れました。彼は、1919 年にハワイ語でハウクルと呼ばれた50 ヘクタールの敷地を購入しました。この土地は第6代のハワイ王であるルナリロの父チャールズ・カナイナの領地でした。1930 年代にはヤザワという日系人の家族が敷地の山奥側に住んでいたこともあります。

ビジターセンター
ビジターセンター

1922 年、現在のライアン演習林のある土地にハワイ固有の植物が植えられましたが、生長は思わしくありませんでした。かつて牧場として使用されていた時期があったため、土が固いことが一因だとされています。ライアン博士はその後10 年以上の歳月をかけ、試行錯誤を繰り返しながら土地を改良し続けました。そして持続的に固有植物が生育できる環境を築き上げ、1940 年代には今日の形に近い自然が完成しました。1953 年、博士の死後に、土地はハワイ大学の管理となり、今後は農園や牧場として使用できないように法制化されました。*

*下に記したように、厳密にはロイ(タロイモ水田)やイプ(ヒョウタン)の畑などが小規模に作られています。

施設の一般公開は1972 年です。ハロルド・L・ ライアン演習林はハワイ大学マノア校の付属施設として、植物層の保護育成や教育、植物に関する伝統文化の継承を目的として運営されています。植物学のドクターを持つハワイ大学の教授がローテーションでこの演習林に滞在し、専属のスタッフとともに保護と研究を続けています。現在の敷地面積は約78ha、栽培する植物の種類は5,000を超えます。先にお話しした固有種や伝統植物だけでなく、園芸品種や農業などの産業育成についても指導的役割を果たしています。

ハワイの固有植物と伝統植物のコーナー
ハワイの固有植物と伝統植物のコーナー

演習林には年間4200mm の降雨量があり、ヘリコニアなどのバショウ科、アヴァプヒなどのショウガ科、カロなどのサトイモ科、サルオガセモドキなどのアナナス科など、熱帯多雨林に適した多様な植物を生育しています。固有植物のなかでは、ヤシのコレクションが知られており、マウイ島のカハヌ・ガーデンとともに最多ですが、ここ数年はビジターセンターの周囲で、各種のハーブ展示にも力を入れています。ハワイ固有種のガーデンエリアにはもっとも力を入れていて、ビジターセンターの裏庭一帯を中心に、山の中腹に至るまで断続的に続きます。2004 年から 2005 年に演習林を閉鎖してリニューアルが行われ、その後はタロイモ水田(ロイ)や伝統家屋など、かつてのアフプアアの復元も行っています。植物園のメインルートは、コオラウ山系中腹にあるアイフアラマ滝まで続きます。

絶滅危惧種や希少種の保管施設
絶滅危惧種や希少種の保管施設

マノア滝トレイルの入口から九十九折りを上ると演習林のビジターセンターに到着しますが、その途中に点々と戸建て住宅のようなものがあります。いずれもハワイ固有種の保護と栽培を研究する施設で、ここには「原生自然への回帰プロジェクト」があって絶滅の危機に瀕しているハワイ固有の植物の保護・育成・復元を行っています。建物の周囲には実験的にさまざまな固有植物を植えています。一見すると雑草のように見えますが、ハワイ諸島でもここでしか見ることのできない稀少な植物も少なくありません。植物図鑑を片手に観察してみるのも良いでしょう。

希少種の栽培施設
希少種の栽培施設

開園日には原則として午前10時からガイドツアーが催されています。英語のみで予約が必要とハードルが高いですが、少しでも理解できるのなら、目の前で花や葉を広げて解説してくれるツアーが植物好きには貴重な体験となることでしょう。

園内地図
園内地図

ハロルド・L・ライアン演習林(Harold L. Lyon Arboretum)
住所  :3860 Manoa Road Honolulu, HI 96822-1180
連絡先 :(808) 988-0456
開園時間:09:00-16:00(月~金)
     09:00-15:00(土)
     ※日曜日は閉園です。
入園料 :5ドル(寄付として収めます)

園内は広大で複雑な形状をしているので、ビジターセンターに併設されている入場口で地図をもらいましょう。コオラウの山の斜面をそのまま利用した熱帯雨林内の演習林なので雨が多く、あまり人の入らないところでは植物が密集し服が濡れることもあります。雨具やTシャツの着替えなども用意しましょう。タオルや水も忘れないように。また、足元はしっかりとした靴が必要です。また、気になる人は蚊除けスプレーも必要です。

ビジターセンター脇にはハワイにゆかりの深い固有植物や先住のハワイ人が持ちこんだ伝統植物が展示されています。主なものにはQRコードが付いていて、植物の詳しい解説を知ることもできます。演習林内でもっとも大きな区画です。ここだけを見るのであれば軽装でもなんとかなりますが、最奥部のアイフアラマ滝まで行く場合は30分近くかかる軽登山となります。上に書いた注意を守りましょう。

雑学をひとつお伝えしておきます。香りのある植物の大半は夕暮れどきに強く芳香を放ちます。その場合は少し遅めの見学となりますが、午後4時ちょうどにメインゲートが閉まりますのでご注意を。

演習林内にはその種類や目的に応じて8つのガーデンに分かれています。

1)Beatrice Krauss Ethnobotanical Garden
2)Betty Ho Memorial Garden
3)Bromeliad Garden
4)Herb and Spice Garden
5)Mapes Garden
6)Native Hawaiian Garden
7)Stemmermann Memorial Garden
8)Young Memorial Garden

次回は「入れ墨(2)」をお話しする予定です。

ライアン演習林https://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2016/02/0_lyon_3571.jpghttps://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2016/02/0_lyon_3571-150x150.jpg近藤純夫特集ハワイ,マノア,ライアン演習林,伝統植物.絶滅危惧種,固有種ライアン演習林はオアフ島のマノア渓谷に位置します。ワイキキを北に上るとマノア地区となり、その先にマノア滝へ続くマノア滝トレイルがあります。トレイルの入口から左に折れるとライアン博士を記念して造られたライアン演習林が広がります。 ライアン博士はミネソタ州出身のアメリカ人です。ミネソタ大学を卒業後、1902 年に博士号を取得。ハワイ砂糖産業協会(HSPA) の招きで、1907 年にハワイを訪れました。彼は、1919 年にハワイ語でハウクルと呼ばれた50 ヘクタールの敷地を購入しました。この土地は第6代のハワイ王であるルナリロの父チャールズ・カナイナの領地でした。1930 年代にはヤザワという日系人の家族が敷地の山奥側に住んでいたこともあります。 1922 年、現在のライアン演習林のある土地にハワイ固有の植物が植えられましたが、生長は思わしくありませんでした。かつて牧場として使用されていた時期があったため、土が固いことが一因だとされています。ライアン博士はその後10 年以上の歳月をかけ、試行錯誤を繰り返しながら土地を改良し続けました。そして持続的に固有植物が生育できる環境を築き上げ、1940 年代には今日の形に近い自然が完成しました。1953 年、博士の死後に、土地はハワイ大学の管理となり、今後は農園や牧場として使用できないように法制化されました。* *下に記したように、厳密にはロイ(タロイモ水田)やイプ(ヒョウタン)の畑などが小規模に作られています。 施設の一般公開は1972 年です。ハロルド・L・ ライアン演習林はハワイ大学マノア校の付属施設として、植物層の保護育成や教育、植物に関する伝統文化の継承を目的として運営されています。植物学のドクターを持つハワイ大学の教授がローテーションでこの演習林に滞在し、専属のスタッフとともに保護と研究を続けています。現在の敷地面積は約78ha、栽培する植物の種類は5,000を超えます。先にお話しした固有種や伝統植物だけでなく、園芸品種や農業などの産業育成についても指導的役割を果たしています。 演習林には年間4200mm の降雨量があり、ヘリコニアなどのバショウ科、アヴァプヒなどのショウガ科、カロなどのサトイモ科、サルオガセモドキなどのアナナス科など、熱帯多雨林に適した多様な植物を生育しています。固有植物のなかでは、ヤシのコレクションが知られており、マウイ島のカハヌ・ガーデンとともに最多ですが、ここ数年はビジターセンターの周囲で、各種のハーブ展示にも力を入れています。ハワイ固有種のガーデンエリアにはもっとも力を入れていて、ビジターセンターの裏庭一帯を中心に、山の中腹に至るまで断続的に続きます。2004 年から 2005 年に演習林を閉鎖してリニューアルが行われ、その後はタロイモ水田(ロイ)や伝統家屋など、かつてのアフプアアの復元も行っています。植物園のメインルートは、コオラウ山系中腹にあるアイフアラマ滝まで続きます。 マノア滝トレイルの入口から九十九折りを上ると演習林のビジターセンターに到着しますが、その途中に点々と戸建て住宅のようなものがあります。いずれもハワイ固有種の保護と栽培を研究する施設で、ここには「原生自然への回帰プロジェクト」があって絶滅の危機に瀕しているハワイ固有の植物の保護・育成・復元を行っています。建物の周囲には実験的にさまざまな固有植物を植えています。一見すると雑草のように見えますが、ハワイ諸島でもここでしか見ることのできない稀少な植物も少なくありません。植物図鑑を片手に観察してみるのも良いでしょう。 開園日には原則として午前10時からガイドツアーが催されています。英語のみで予約が必要とハードルが高いですが、少しでも理解できるのなら、目の前で花や葉を広げて解説してくれるツアーが植物好きには貴重な体験となることでしょう。 ハロルド・L・ライアン演習林(Harold L. Lyon Arboretum) 住所  :3860 Manoa Road Honolulu, HI 96822-1180 連絡先 :(808) 988-0456 開園時間:09:00-16:00(月~金)      09:00-15:00(土)      ※日曜日は閉園です。 入園料 :5ドル(寄付として収めます) 園内は広大で複雑な形状をしているので、ビジターセンターに併設されている入場口で地図をもらいましょう。コオラウの山の斜面をそのまま利用した熱帯雨林内の演習林なので雨が多く、あまり人の入らないところでは植物が密集し服が濡れることもあります。雨具やTシャツの着替えなども用意しましょう。タオルや水も忘れないように。また、足元はしっかりとした靴が必要です。また、気になる人は蚊除けスプレーも必要です。 ビジターセンター脇にはハワイにゆかりの深い固有植物や先住のハワイ人が持ちこんだ伝統植物が展示されています。主なものにはQRコードが付いていて、植物の詳しい解説を知ることもできます。演習林内でもっとも大きな区画です。ここだけを見るのであれば軽装でもなんとかなりますが、最奥部のアイフアラマ滝まで行く場合は30分近くかかる軽登山となります。上に書いた注意を守りましょう。 雑学をひとつお伝えしておきます。香りのある植物の大半は夕暮れどきに強く芳香を放ちます。その場合は少し遅めの見学となりますが、午後4時ちょうどにメインゲートが閉まりますのでご注意を。 演習林内にはその種類や目的に応じて8つのガーデンに分かれています。 1)Beatrice Krauss Ethnobotanical Garden 2)Betty Ho Memorial Garden 3)Bromeliad Garden 4)Herb and Spice Garden 5)Mapes Garden 6)Native Hawaiian Garden 7)Stemmermann Memorial Garden 8)Young Memorial Garden 次回は「入れ墨(2)」をお話しする予定です。ハワイの自然・文化・歴史、ライフスタイルを語る