地底から上昇したマグマの噴出口
地底から上昇したマグマの噴出口

地球は50億年ほど前に誕生しました。当時、惑星全体は燃えるように熱く、生命の誕生する余地はありませんでした。やがて少しずつ地球の表面が冷め、10億年近くが経過した38億年ほど前に単細胞の生物が誕生します。海の出現がこれを後押しし、地球の表面は新しい生命の誕生を受け容れる環境ができあがりはじめます。原始的な植物(シアノバクテリア)が誕生したのは約35億年前。こうして地球の基本的な形が作られていきました。

しかし、地球の内部は現在に至るまで高温が保たれ、内部の温度差によって熱い塊(プリューム)と、それよりは温度の低い塊がゆっくりと上昇と下降を繰り返してきました。この動きに引きずられるように、地球の表面を形成する地殻は少しずつ移動を続けています。太平洋プレート上にあるハワイ諸島もその例外ではなく、年におよそ6cmから9cmの速度で北西へと移動を続けています。日本に大きな災害を生じさせる地震は、北アメリカ・プレートやフィリピン・プレート、ユーラシア・プレートとともに、太平洋プレートが日本列島に押し寄せる結果です。

多数の噴出口(プウオーオー)
多数の噴出口(プウオーオー)

さて、プリュームの上昇と下降に伴ってプレートに近い部分には熱いマグマの塊が移動します。これらは少しずつ移動しますが、なかには短期間(3,000万年ほど)地殻の直下に留まるものがあります。これをホットスポット(マグマ溜まり)と呼びます。ホットスポットは地表より高温なため(周囲の固化した岩石より比重が軽いため)、少しずつ地殻を溶かしながら上昇を続けます。そして大陸や海底などを貫通しマグマを噴出させます。ちなみに貫通する前に冷え固まったものは深成岩と呼ばれます。マグマ(主成分は岩石と水)が火口から噴出し、地上や海底に出現したものは溶岩と呼ばれます。紛らわしい表現ですが、溶けて流れる状態のものだけでなく、冷え固まったものも溶岩と呼びます。

ハワイ諸島の直下にはホットスポットがあり、ここから上昇するマグマは海底で噴出し、少しずつ溶岩を堆積させてきました。これが海上に顔を出すと「島」になります。太平洋プレートは移動を続けますから、海底に堆積した溶岩の塊は少しずつ北西に移動します。ひとつのホットスポットから供給された溶岩が単一の島を形成する期間はおよそ100万年。それより時間が経過するとホットスポットのパイプから切り離され、島の誕生は停止して遠去かります。そしてホットスポットの直上には新たな溶岩が堆積しはじめます。

火山ガスとガスマスク
火山ガスとガスマスク

ハワイ諸島において、ホットスポットが形成した溶岩堆積物のうち、もっとも新しい島はハワイ島です。ハワイ島では北西の対極にあたる南東部のキラウエア付近で現在も噴火を続けています。噴火エリアは大きく分けてキラウエアカルデラのなかのハレマウマウ火口と、プウオーオー噴石丘、そしてこの2つの噴火口を結ぶリフト(割れ目)があり、活発な活動を続けています。今回はそのうち、プウオーオーに噴出する溶岩についてお話しします。

溶岩流を見たことのある人は、ゆっくりと前進しながらときおり流れの表面が砕け、内部から真っ赤な溶岩が噴き出してくるのに気づいたことでしょう。ハワイの溶岩は極めて粘性が低い(粘り気が少なく水のように流れる)のですが、この光景を見るとドロドロとした塊のイメージを持ちます。しかし、地底から上昇して地表に噴出する箇所に位置するプウオーオーの噴火口からは時速にして 80km 近い高速で流動しています。マグマのパイプはそれほど巨大ではありませんが(各噴出口の直径は1mくらい)、広大に流れる溶岩の源流部はきわめて高速です。

硫黄化合物の結晶
硫黄化合物の結晶

マグマが噴出する際は多量の火山ガスも噴出します。その多くは水蒸気と二酸化炭素です。その他に硫化水素や二酸化硫黄、塩化水素、メタンなどが含まれます。写真のように、プウオーオーの噴出口周辺には多量の硫黄化合物が付着しています。前回も書きましたが、同じマグマから噴出した溶岩であっても、地表を流れる過程で温度や流量、速度、成分の変化により、滑らかな溶岩(パホエホエ溶岩)が噴出する場合と、ザラザラとした溶岩(アア溶岩)が噴出する場合があります。

地表を流れ出した溶岩は温度と圧力によって粘性に大きな違いが生じます。そのため、流れ出すとすぐに外側が固化し、その内側を後続の溶岩が高温のまま流れ続けます。ときおり内圧によって「殻」が破れて溢れかえったり、天井部に穴を開けたりしますが、大半は地底にトンネルを作りながら海抜の低い方に流れ下ります。

パホエホエ溶岩
パホエホエ溶岩
アア溶岩
アア溶岩

次回は山の鳥についてお話しします。

マグマから溶岩へhttps://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2016/07/01_n021b.jpghttps://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2016/07/01_n021b-150x150.jpg近藤純夫特集キラウエア,ハワイ,マグマ,溶岩,火山地球は50億年ほど前に誕生しました。当時、惑星全体は燃えるように熱く、生命の誕生する余地はありませんでした。やがて少しずつ地球の表面が冷め、10億年近くが経過した38億年ほど前に単細胞の生物が誕生します。海の出現がこれを後押しし、地球の表面は新しい生命の誕生を受け容れる環境ができあがりはじめます。原始的な植物(シアノバクテリア)が誕生したのは約35億年前。こうして地球の基本的な形が作られていきました。 しかし、地球の内部は現在に至るまで高温が保たれ、内部の温度差によって熱い塊(プリューム)と、それよりは温度の低い塊がゆっくりと上昇と下降を繰り返してきました。この動きに引きずられるように、地球の表面を形成する地殻は少しずつ移動を続けています。太平洋プレート上にあるハワイ諸島もその例外ではなく、年におよそ6cmから9cmの速度で北西へと移動を続けています。日本に大きな災害を生じさせる地震は、北アメリカ・プレートやフィリピン・プレート、ユーラシア・プレートとともに、太平洋プレートが日本列島に押し寄せる結果です。 さて、プリュームの上昇と下降に伴ってプレートに近い部分には熱いマグマの塊が移動します。これらは少しずつ移動しますが、なかには短期間(3,000万年ほど)地殻の直下に留まるものがあります。これをホットスポット(マグマ溜まり)と呼びます。ホットスポットは地表より高温なため(周囲の固化した岩石より比重が軽いため)、少しずつ地殻を溶かしながら上昇を続けます。そして大陸や海底などを貫通しマグマを噴出させます。ちなみに貫通する前に冷え固まったものは深成岩と呼ばれます。マグマ(主成分は岩石と水)が火口から噴出し、地上や海底に出現したものは溶岩と呼ばれます。紛らわしい表現ですが、溶けて流れる状態のものだけでなく、冷え固まったものも溶岩と呼びます。 ハワイ諸島の直下にはホットスポットがあり、ここから上昇するマグマは海底で噴出し、少しずつ溶岩を堆積させてきました。これが海上に顔を出すと「島」になります。太平洋プレートは移動を続けますから、海底に堆積した溶岩の塊は少しずつ北西に移動します。ひとつのホットスポットから供給された溶岩が単一の島を形成する期間はおよそ100万年。それより時間が経過するとホットスポットのパイプから切り離され、島の誕生は停止して遠去かります。そしてホットスポットの直上には新たな溶岩が堆積しはじめます。 ハワイ諸島において、ホットスポットが形成した溶岩堆積物のうち、もっとも新しい島はハワイ島です。ハワイ島では北西の対極にあたる南東部のキラウエア付近で現在も噴火を続けています。噴火エリアは大きく分けてキラウエアカルデラのなかのハレマウマウ火口と、プウオーオー噴石丘、そしてこの2つの噴火口を結ぶリフト(割れ目)があり、活発な活動を続けています。今回はそのうち、プウオーオーに噴出する溶岩についてお話しします。 溶岩流を見たことのある人は、ゆっくりと前進しながらときおり流れの表面が砕け、内部から真っ赤な溶岩が噴き出してくるのに気づいたことでしょう。ハワイの溶岩は極めて粘性が低い(粘り気が少なく水のように流れる)のですが、この光景を見るとドロドロとした塊のイメージを持ちます。しかし、地底から上昇して地表に噴出する箇所に位置するプウオーオーの噴火口からは時速にして 80km 近い高速で流動しています。マグマのパイプはそれほど巨大ではありませんが(各噴出口の直径は1mくらい)、広大に流れる溶岩の源流部はきわめて高速です。 マグマが噴出する際は多量の火山ガスも噴出します。その多くは水蒸気と二酸化炭素です。その他に硫化水素や二酸化硫黄、塩化水素、メタンなどが含まれます。写真のように、プウオーオーの噴出口周辺には多量の硫黄化合物が付着しています。前回も書きましたが、同じマグマから噴出した溶岩であっても、地表を流れる過程で温度や流量、速度、成分の変化により、滑らかな溶岩(パホエホエ溶岩)が噴出する場合と、ザラザラとした溶岩(アア溶岩)が噴出する場合があります。 地表を流れ出した溶岩は温度と圧力によって粘性に大きな違いが生じます。そのため、流れ出すとすぐに外側が固化し、その内側を後続の溶岩が高温のまま流れ続けます。ときおり内圧によって「殻」が破れて溢れかえったり、天井部に穴を開けたりしますが、大半は地底にトンネルを作りながら海抜の低い方に流れ下ります。 次回は山の鳥についてお話しします。ハワイの自然・文化・歴史、ライフスタイルを語る