ハワイでは至るところでマングースを見かけます。かつては農場や山麓など、人里離れた場所に生息していましたが、都市にも侵出し、さまざまな問題を与えています。

ハワイにマングースが導入されたのは1883年のことです。当時、サトウキビ畑にネズミの被害が大きく、これを打開するために考えられました。ジャマイカから持ち込まれた72匹のマングースはハワイ島のハマクア・コーストに広がる各サトウキビ農園に放たれました。

ハワイ各島に勢力を広げるマングース
ハワイ各島に勢力を広げるマングース

しかし残念なことに、マングースは日中に活動するのに対し、ネズミは夜行性であるため、ほとんど役には立ちませんでした。マングースはその代わりにハワイ固有の鳥であるネネの卵を食べ尽くしました。18世紀末には2万羽以上も生息していたはずのネネがその後の1世紀半で絶滅したのです。*1 この他にもハワイ島に生息していたオナガミズナギドリの卵を食べ尽くしました。

*1 個人が飼育していた30羽を保護繁殖させ、今日では数千羽に復活しています。

マングースの被害は野鳥に限りません。農作物の被害は年間数千万ドルに達する上に、レプトスピラ症をまき散らす張本人でもありました。これらの問題は19世紀末から20世紀初頭にかけて判明し、学者や環境団体は行政と組んでマングースの絶滅に取りかかろうとしました。ハワイ郡は1916年に死んだマングースの頭を持って来れば10セントの報奨金を提供するとしました。

しかし砂糖産業組合がこれに反対しました。19世紀末の組合のドンであったジョセフ・マースデンはマングースを擁護し、マングースはネズミや害虫などを大幅に減らしていると主張したのです。*2 ハワイ州政府の取り組みは税金の無駄遣いだと激しく批難したのです。

*2 マースデンの主張を掲載した当時の新聞です。
*2 マースデンの主張を掲載した当時の新聞です。

その主張も虚しく、マングースは諸島全域に拡がり、ついにはサトウキビ農園を超え、周辺の集落を経て大都会のホノルルにまで侵出するようになります。ハワイ島のカイルア・コナでは、猫の餌場にマングースが出没し、自分の体の何倍もある猫を威嚇して餌を横取りするということも起きました。やがてマングースはニワトリの卵を狙いはじめました。ニワトリの顔に唾液を飛ばして驚かせ、走りまわる隙に卵をくすねるのです。

 ネネ(ハワイガン)は地面に直接卵を産む
ネネ(ハワイガン)は地面に直接卵を産む

今日、ハワイ州は、マングースを侵略的外来種に指定し、マングースの捕獲に予算を割いています。唯一、マングースがいない島とされていたカウアイ島においても2012年に初めて目撃されて以降、その勢力は増しています。

どのような侵略的動植物にも言えることですが、マングースに罪があるわけではありません。安易に持ち込んだ人間の側にすべての責任があります。仮に人為的にマングースを持ち込まなかったとしても、蚊やヘビなどと同じく、いずれ貨物船などに紛れて侵出していた可能性はありますが、いずれにしても管理責任は人間社会にあります。また、地元の関係者だけでなく、そこを訪れるすべての人が注意すべき事柄で、観光客もその例外ではないということを肝に銘ずるべきでしょう。

猫を威嚇するマングース
猫を威嚇するマングース

マングースは、マングース科エジプトマングース属の動物ですイタチに似ていますが、まったく異なる進化の系列に属します。体長は25~40cm、体重は0.3~1.0kgで、雌より雄の方が少し大きいです。体色は暗褐色から淡褐色まであります。雄雌両方の肛門近くに臭腺があり、驚くと悪臭を放ちます。近縁に大型のジャワマングースがいます。

マングースの歴史https://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2020/01/special256.jpghttps://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2020/01/special256-150x150.jpg近藤純夫特集オナガミズナギドリ,サトウキビ,ネズミ,ネネ,マングース,砂糖産業ハワイでは至るところでマングースを見かけます。かつては農場や山麓など、人里離れた場所に生息していましたが、都市にも侵出し、さまざまな問題を与えています。 ハワイにマングースが導入されたのは1883年のことです。当時、サトウキビ畑にネズミの被害が大きく、これを打開するために考えられました。ジャマイカから持ち込まれた72匹のマングースはハワイ島のハマクア・コーストに広がる各サトウキビ農園に放たれました。 しかし残念なことに、マングースは日中に活動するのに対し、ネズミは夜行性であるため、ほとんど役には立ちませんでした。マングースはその代わりにハワイ固有の鳥であるネネの卵を食べ尽くしました。18世紀末には2万羽以上も生息していたはずのネネがその後の1世紀半で絶滅したのです。*1 この他にもハワイ島に生息していたオナガミズナギドリの卵を食べ尽くしました。 *1 個人が飼育していた30羽を保護繁殖させ、今日では数千羽に復活しています。 マングースの被害は野鳥に限りません。農作物の被害は年間数千万ドルに達する上に、レプトスピラ症をまき散らす張本人でもありました。これらの問題は19世紀末から20世紀初頭にかけて判明し、学者や環境団体は行政と組んでマングースの絶滅に取りかかろうとしました。ハワイ郡は1916年に死んだマングースの頭を持って来れば10セントの報奨金を提供するとしました。 しかし砂糖産業組合がこれに反対しました。19世紀末の組合のドンであったジョセフ・マースデンはマングースを擁護し、マングースはネズミや害虫などを大幅に減らしていると主張したのです。*2 ハワイ州政府の取り組みは税金の無駄遣いだと激しく批難したのです。 その主張も虚しく、マングースは諸島全域に拡がり、ついにはサトウキビ農園を超え、周辺の集落を経て大都会のホノルルにまで侵出するようになります。ハワイ島のカイルア・コナでは、猫の餌場にマングースが出没し、自分の体の何倍もある猫を威嚇して餌を横取りするということも起きました。やがてマングースはニワトリの卵を狙いはじめました。ニワトリの顔に唾液を飛ばして驚かせ、走りまわる隙に卵をくすねるのです。 今日、ハワイ州は、マングースを侵略的外来種に指定し、マングースの捕獲に予算を割いています。唯一、マングースがいない島とされていたカウアイ島においても2012年に初めて目撃されて以降、その勢力は増しています。 どのような侵略的動植物にも言えることですが、マングースに罪があるわけではありません。安易に持ち込んだ人間の側にすべての責任があります。仮に人為的にマングースを持ち込まなかったとしても、蚊やヘビなどと同じく、いずれ貨物船などに紛れて侵出していた可能性はありますが、いずれにしても管理責任は人間社会にあります。また、地元の関係者だけでなく、そこを訪れるすべての人が注意すべき事柄で、観光客もその例外ではないということを肝に銘ずるべきでしょう。 マングースは、マングース科エジプトマングース属の動物ですイタチに似ていますが、まったく異なる進化の系列に属します。体長は25~40cm、体重は0.3~1.0kgで、雌より雄の方が少し大きいです。体色は暗褐色から淡褐色まであります。雄雌両方の肛門近くに臭腺があり、驚くと悪臭を放ちます。近縁に大型のジャワマングースがいます。ハワイの自然・文化・歴史、ライフスタイルを語る