ハワイではあちこちで竹林が見られます。多くは日本から持ちこまれたもので、たとえばワイキキの北に連なるコオラウ山系やマウイ島ハレアカラの南麓に見られる竹林は、マダケが野生化したものです。しかし、それとは別の竹もあります。ハワイ語でオヘと呼ばれるものです。ハワイに自生していたものではなく、東南アジアが原産のダイサンチクがハワイで独自の進化を遂げたものです。*
*この他に、わずかですが、ホウライチクの仲間も導入されました。

オヘ(ゴールデン・バンブー)と呼ばれたハワイ古来の竹
オヘ(ゴールデン・バンブー)と呼ばれたハワイ古来の竹

オヘは多年草で、棹高は6~15m、棹径は5~10cmほどです。イネ科の植物でなかなか花を咲かせませんが、たとえばマダケの場合は、120年の周期で花を付けるのですが、世界各地で一斉に開花します。竹の先祖はひとつで、遺伝子のなかにその情報が組み込まれているのかもしれません。ハワイの竹の先祖であるダイサンチクは東南アジア各地で栽培されています。また、欧米でも観賞用に植えられています。ハワイでは観光地や植物園、ホテルの庭などでも見かけます。その変種とも言えるオヘは、稈が黄金色をしてる点が特徴です。

スティックのように用いるプー・イリという楽器
スティックのように用いるプー・イリという楽器

あらゆる植物のなかでもっとも成長が速いのが竹です。タケノコの24時間あたりの生長(伸長)量は、マダケで121cm、モウソウチクは119cmにもなります。この圧倒的な成長速度を支えているのは、節(ふし)ごとに起こる成長作用です。タケは他の植物と同じように、株の頂点(一番上)で活発な細胞分裂を起こしながら発達します。これと同時に、それぞれの節でも成長が起きます。たとえば20の節を持つタケがそれぞれ3cmずつ伸びたとします。これをひとつの株に換算すると、3cm×20箇所ですから60cmとなり、これに頂点部分の発達部分が加えられて、トータルでは70cmほども伸びることになるのです。

成長の早さとともに知られているのが、開花の周期の長さと、咲くとすぐに枯れるという現象です。開花すると間もなく枯れてしまう植物は珍しくありません。ハワイではギンケンソウなどが知られています。ただし、竹の場合は一斉に開花して枯れるので、タケに依存する動植物にとっては大きなダメージとなります。竹を主食とするパンダの生息地では、竹の花が一斉開花すると、パンダが生存の危機に陥ります。また、竹の文化に支えられている民族にとっても深刻な問題となります。

常緑のイメージがある竹ですが、実は1年周期で落葉します。ハワイではそれほどはっきりとしませんが、葉は紅葉してから落葉します。おもしろいのは、紅葉が秋ではなく春に起こり、赤ではなく黄褐色であること。そして、株全体が一斉に紅葉するのではなく、少しずつ紅葉していくということです。それぞれの紅葉期間は短く、1~2日で終了します。

文化

カフナの儀式の際、聖水を入れる筒
カフナの儀式の際、聖水を入れる筒

オヘは、先住のハワイ人であるタヒチやマルケサスなどから移住した人々によってもたらされました。暮らしに欠かすことのできない重要な植物だったからです。竹を含む重要植物はカヌーによって運ばれたことから、ハワイではこれらをカヌープランツとか伝統植物と呼んで重視しています。
ハワイの竹(オヘ)は日本や東南アジアで見られる竹とは少し異なります。なかでも棹の太さと節の厚さに特徴があります。オヘは一般的な竹より節の間隔が長く、しかもきわめて薄くできています。この長さと薄さを利用して作られたのが、ハワイの伝統楽器であるオヘ・ハノ・イフ(鼻笛)やプ・イリ(スティック)、プ・オへ(ホ

オヘ・ハノ・イフ(鼻笛)を吹くハワイ火山国立公園のレンジャー
オヘ・ハノ・イフ(鼻笛)を吹くハワイ火山国立公園のレンジャー

ラ貝のような効果のある竪笛)、オヘ・カーエケエケ(細い方で太い方を叩いたり、地面に敷いたカパに落として音を出すなど、打楽器として使用する)などです。オヘは、楽器のほかにも、水筒や茶碗として利用されたほか、大型ものは遠来の客を迎えるときの儀式に使用されました。女性はオヘを細い棒状にして髪の毛を束ねたり、形を整えるために用いました。また、カパ(樹皮をなめしたもので布地として使用します)をデザインする際の模様付用スタンプや、建物の構造材などとして利用しました。この他、オヘは薬としても活用されました。炎症止めや痛み止めとして、タケの灰にアフアヴァやラマの粉末と混ぜ合わせて使用したり、ククイの若い実から採れる液とパパイアの果汁を混ぜ合わせたりして使用しました。また、竹の筒部分を焼いたものを黒の染料として用いました。

神話

神話の世界では四大神の一人であるカーネのキノ・ラウ(化身)とも言われています。また、伝承研究家のフォナンダーの本によれば、半神マウイが指を切ったとき、母である女神ヒナはカヒキ(タヒチ)からやって来てマウイ島のワイカモイに住み、竹を調合した薬で人々の傷を手当てしたとあります。

分布

オアフ島ではライアン演習林やホオマルヒア植物園、オーデュボン・ガーデン、コオラウ山中などで野生化しています。ハワイ島ではアカカ滝州立公園、マウイ島では北海岸のハイクや南海岸のワイモク滝トレイルの途中、カウアイ島では北海岸のハナカピアイやククイウラなどで見られます。

オヘ・カパラと呼ばれる模様付けのスティック
オヘ・カパラと呼ばれる模様付けのスティック

オヘ
英名  :Golden Bamboo
ハワイ名:‘Ohe
和名  :タケ
学名  :Bambusa vulgaris var. striata(イネ科)
原産地 :インド、ジャワ(外来種)

トップページの写真はマウイ島ワイモク滝途中の竹林です。 次回はハワイの虹についてお話しします。

特集:オヘ(ハワイの竹)https://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2015/06/top201.jpghttps://www.holoholo.world/kawaraban/wp-content/uploads/2015/06/top201-150x150.jpg近藤純夫特集ゴールデンバンブー,ダイサンチク,ハワイ,竹ハワイではあちこちで竹林が見られます。多くは日本から持ちこまれたもので、たとえばワイキキの北に連なるコオラウ山系やマウイ島ハレアカラの南麓に見られる竹林は、マダケが野生化したものです。しかし、それとは別の竹もあります。ハワイ語でオヘと呼ばれるものです。ハワイに自生していたものではなく、東南アジアが原産のダイサンチクがハワイで独自の進化を遂げたものです。* *この他に、わずかですが、ホウライチクの仲間も導入されました。 オヘは多年草で、棹高は6~15m、棹径は5~10cmほどです。イネ科の植物でなかなか花を咲かせませんが、たとえばマダケの場合は、120年の周期で花を付けるのですが、世界各地で一斉に開花します。竹の先祖はひとつで、遺伝子のなかにその情報が組み込まれているのかもしれません。ハワイの竹の先祖であるダイサンチクは東南アジア各地で栽培されています。また、欧米でも観賞用に植えられています。ハワイでは観光地や植物園、ホテルの庭などでも見かけます。その変種とも言えるオヘは、稈が黄金色をしてる点が特徴です。 あらゆる植物のなかでもっとも成長が速いのが竹です。タケノコの24時間あたりの生長(伸長)量は、マダケで121cm、モウソウチクは119cmにもなります。この圧倒的な成長速度を支えているのは、節(ふし)ごとに起こる成長作用です。タケは他の植物と同じように、株の頂点(一番上)で活発な細胞分裂を起こしながら発達します。これと同時に、それぞれの節でも成長が起きます。たとえば20の節を持つタケがそれぞれ3cmずつ伸びたとします。これをひとつの株に換算すると、3cm×20箇所ですから60cmとなり、これに頂点部分の発達部分が加えられて、トータルでは70cmほども伸びることになるのです。 成長の早さとともに知られているのが、開花の周期の長さと、咲くとすぐに枯れるという現象です。開花すると間もなく枯れてしまう植物は珍しくありません。ハワイではギンケンソウなどが知られています。ただし、竹の場合は一斉に開花して枯れるので、タケに依存する動植物にとっては大きなダメージとなります。竹を主食とするパンダの生息地では、竹の花が一斉開花すると、パンダが生存の危機に陥ります。また、竹の文化に支えられている民族にとっても深刻な問題となります。 常緑のイメージがある竹ですが、実は1年周期で落葉します。ハワイではそれほどはっきりとしませんが、葉は紅葉してから落葉します。おもしろいのは、紅葉が秋ではなく春に起こり、赤ではなく黄褐色であること。そして、株全体が一斉に紅葉するのではなく、少しずつ紅葉していくということです。それぞれの紅葉期間は短く、1~2日で終了します。 文化 オヘは、先住のハワイ人であるタヒチやマルケサスなどから移住した人々によってもたらされました。暮らしに欠かすことのできない重要な植物だったからです。竹を含む重要植物はカヌーによって運ばれたことから、ハワイではこれらをカヌープランツとか伝統植物と呼んで重視しています。 ハワイの竹(オヘ)は日本や東南アジアで見られる竹とは少し異なります。なかでも棹の太さと節の厚さに特徴があります。オヘは一般的な竹より節の間隔が長く、しかもきわめて薄くできています。この長さと薄さを利用して作られたのが、ハワイの伝統楽器であるオヘ・ハノ・イフ(鼻笛)やプ・イリ(スティック)、プ・オへ(ホ ラ貝のような効果のある竪笛)、オヘ・カーエケエケ(細い方で太い方を叩いたり、地面に敷いたカパに落として音を出すなど、打楽器として使用する)などです。オヘは、楽器のほかにも、水筒や茶碗として利用されたほか、大型ものは遠来の客を迎えるときの儀式に使用されました。女性はオヘを細い棒状にして髪の毛を束ねたり、形を整えるために用いました。また、カパ(樹皮をなめしたもので布地として使用します)をデザインする際の模様付用スタンプや、建物の構造材などとして利用しました。この他、オヘは薬としても活用されました。炎症止めや痛み止めとして、タケの灰にアフアヴァやラマの粉末と混ぜ合わせて使用したり、ククイの若い実から採れる液とパパイアの果汁を混ぜ合わせたりして使用しました。また、竹の筒部分を焼いたものを黒の染料として用いました。 神話 神話の世界では四大神の一人であるカーネのキノ・ラウ(化身)とも言われています。また、伝承研究家のフォナンダーの本によれば、半神マウイが指を切ったとき、母である女神ヒナはカヒキ(タヒチ)からやって来てマウイ島のワイカモイに住み、竹を調合した薬で人々の傷を手当てしたとあります。 分布 オアフ島ではライアン演習林やホオマルヒア植物園、オーデュボン・ガーデン、コオラウ山中などで野生化しています。ハワイ島ではアカカ滝州立公園、マウイ島では北海岸のハイクや南海岸のワイモク滝トレイルの途中、カウアイ島では北海岸のハナカピアイやククイウラなどで見られます。 オヘ 英名  :Golden Bamboo ハワイ名:‘Ohe 和名  :タケ 学名  :Bambusa vulgaris var. striata(イネ科) 原産地 :インド、ジャワ(外来種) トップページの写真はマウイ島ワイモク滝途中の竹林です。 次回はハワイの虹についてお話しします。ハワイの自然・文化・歴史、ライフスタイルを語る